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気分循環性障害とは?症状・原因・双極性障害との違いを専門家が解説

気分循環性障害(気分循環症)とは?軽度の気分の波が続く精神障害

気分循環性障害(きぶんじゅんかんせいしょうがい、Cyclothymic Disorder)は、軽度の躁状態(軽躁状態)と抑うつ状態が交互に現れ、慢性的に気分の波が続く精神障害です。

双極性障害(そうきょくせいしょうがい)に類似していますが、症状の重さが異なります。

障害名症状の重さ気分の波の特徴
双極性障害症状が重い(日常生活に大きな支障)重度の躁状態またはうつ状態が現れる
気分循環性障害症状が軽い(軽度な気分の波)軽躁状態と軽度の抑うつ状態が続く

気分循環性障害の主な症状

気分循環性障害の特徴は、「気分・活動性の波」が長期にわたって持続することです。
これらの波は、仕事、学業、人間関係など、日常生活における一貫性を欠く原因となります。

(1) 軽躁状態の期間(軽度の躁状態)

「楽観的で自信がある時期」

  • 気分が高揚し、楽観的になる
  • 自信過剰になる、自己評価が高まる
  • 活動的になり、アイデアや思考が次々と湧き出る
  • 睡眠時間が短くても平気になる

(2) 軽度の抑うつ状態の期間

「悲観的で自信を失う時期」

  • 気分が落ち込み、悲観的になる
  • 自信喪失、自己評価の低下
  • 活動性の低下、疲労感
  • 集中力の低下

これらの気分の変動が、成人では2年間以上(小児・青年では1年間以上)持続し、その期間の大半で気分の波が認められる場合に診断されます。


気分循環性障害の原因と発症リスク

気分循環性障害の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

(1) 遺伝的・生物学的要因

双極性障害と同じく、遺伝的要素が強く関与しているとされています。

  • 家族歴に双極性障害や気分循環性障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高まります。
  • 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスの乱れが関与している可能性が指摘されています。

(2) 環境的要因

幼少期の経験や慢性的なストレスといった環境的要因も、発症に寄与する可能性があります。

  • ストレスの多い生活環境
    慢性的な精神的ストレスが脳機能に影響を与え、気分の安定性を損なうことがあります。
  • 幼少期のトラウマや不適切な養育環境
    感情の調整能力の発達に影響を与え、将来的な気分障害のリスクを高めることがあります。

診断と治療の進め方

(1) 診断方法

診断は、患者さん自身からの症状の自己報告と、医師による詳細な臨床評価(問診)に基づいて行われます。

  • 症状の慢性性
    軽躁状態と抑うつ状態の期間がどれくらい続いているか。
  • 症状の重さの評価
    症状が双極性障害(躁病エピソードや大うつ病エピソード)の基準を満たしていないかを確認します。

(2) 主な治療方法

気分循環性障害は、適切な治療を受けることで症状の管理が可能になり、生活の質の改善が期待できます。

① 薬物療法

気分安定薬が治療の中心となることが多く、気分の波を小さくし、症状が重症化(双極性障害への移行)するのを防ぐ目的で用いられます。

  • 気分安定薬
    リチウム、特定の抗てんかん薬(バルプロ酸、ラモトリギンなど)
    • 薬物に対する反応は個人差が大きいため、医師と相談しながら最適な薬と量を調整することが重要です。

② 心理教育

患者さんが自身の病気について理解を深め、症状を把握し、それに対処するための知識を学ぶ治療法です。

  • 病気のメカニズムや症状のサインを理解することで、早期に対策を講じられるようになります。

③ カウンセリング・心理療法

気分循環性障害では、認知行動療法(CBT)対人関係・社会リズム療法(IPSRT)などが有効とされています。

  • ストレス管理技術の習得
    日常生活でのストレスを適切に処理するスキルを身につけます。
  • 生活リズムの安定
    特に睡眠や食事などの生活リズムを整え、気分の波を安定させる戦略を構築します。

周囲の理解と適切なサポートの重要性

気分循環性障害の気分の変動は、しばしば「単なる性格のムラ」や「感情的な人」といった誤解を招きがちです。
しかし、これは適切な医療的介入が必要な精神障害です。

患者さんだけでなく、家族、友人、職場の同僚など、周囲の人々が病気について正しく理解し、適切なサポートを行うことが、患者さんの安定した生活と社会的な孤立を防ぐために非常に重要となります。